原材料の「魚」ってどの魚?表示でわかること・わからないこと

原材料の「魚」ってどの魚?表示でわかること・わからないこと

コラム 選び方 公開 更新約30分で読めます

原材料名の「魚介類」「魚類」は、国の通知が認めた分類名です。個々の魚種名まで書く法的な義務はありません。だから「書いていない=隠している」とは限らず、それ自体は違反でもありません。ただし、その4文字の中には生の魚も、乾燥・粉砕したフィッシュミールも、エキスも加水分解物も、すべて同じ「魚介類」として入ります。読み手が文字から判別できる範囲は、思っているより狭いのです。

この記事では、その「狭さ」がどこから来るのかを、一次資料まで遡って整理します。よりどころにするのは、農林水産省と環境省の連名で出された局長通知(21消安第2236号)、その中の第1表、そして環境省のペットフード安全法Q&Aです。あわせて、同じ原材料表示でも米国(AAFCO)のルールが正反対の設計になっていることも見ていきます。

そして最後に、ニコルスの話をします。ニコルスも、原材料に魚種を書けない側のブランドです。なぜ書けないのか、書けないことで何が失われるのか。そこまで含めてお伝えします。

結論:「魚介類」は国が認めた分類名。魚種を書く義務はない

器に盛ったフード
原材料欄に「魚介類」と書かれているとき、中身は一種類とは限らない

原材料名欄に並ぶ「魚介類」「魚類」の正体

パッケージ裏の一括表示欄に「魚介類」とだけ書かれている。あの表記は、メーカーが勝手に略しているわけではありません。国の通知が明示的に認めた「分類名」という書き方です。

根拠は、ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)の施行にあたって出された局長通知にあります。そこには、こう書かれています。

「原材料名」又は「原材料」の文字を記載した上で、原則として使用した原材料(添加物も含まれる。)を全て記載する。
添加物以外の原材料にあっては、第1表に記載する分類名による表示も可能とする。
(農林水産省消費・安全局長・環境省自然環境局長通知「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律の施行について」(21消安第2236号))

「使用した原材料を全て記載する」が原則です。そのうえで、添加物以外の原材料については分類名でもよい、と続きます。この2文が並んでいることが重要です。全部書く義務はあるが、どの粒度で書くかは選べるという構造になっています。

だから「書いていない=隠している」とは限らない

ここが最初のつまずきどころです。「魚介類としか書いていないのは不誠実だ」という感覚は自然なものです。しかし制度の建て付け上、それは違反ではありません。

もう少し踏み込むと、書かない理由は一つではありません。原料が本当に変動していて書けない場合もあります。書けるのに、あえて書いていない場合もあります。表示の粒度をそろえるために分類名で統一している場合もあります。「魚介類」という4文字は、そのどれであっても同じ4文字です。

つまり、この表記から読み取れるのは「分類名で書くことを選んだ」という事実だけです。そこから先の姿勢や品質は、表示の外側にあります。

この記事でわかること

  • 「魚介類」を認めている条文が、どの通知のどこにあるか
  • 「魚介類(まぐろ、他)」の括弧と「他」が、どんな条件で使えるのか
  • なぜ日本のラベルでは、粉なのか原形なのかを文字から判別できないのか
  • 「魚としか書いていない」ことが、実際に困る場面はどこか
  • ニコルスが魚種を書けない理由と、それによって失われるもの

原材料名欄のルールを、条文で確認する

ペットフード安全法が求めるもの──原則すべて記載、加工助剤は省略可

まず、法律側のルールです。ペットフード安全法は、犬猫用のフードに5つの表示事項を義務づけています。名称、原材料名、賞味期限、事業者の氏名または名称および住所、原産国名の5つです(農林水産省「ペットフードの安全確保」)。

このうち原材料名について、通知は「原則として使用した原材料(添加物も含まれる。)を全て記載する」と定めています。ここには例外が一つあります。加工助剤です。通知は加工助剤を、製造過程で除去されるもの、原材料由来の成分と同じ成分に変わり量を明らかに増やさないもの、含有量が少なく影響を及ぼさないもの、と定義しています。

この定義に当てはまるものは、表示を省略できます。逆に言えば、それ以外はすべて書かれているはずだ、ということでもあります。原材料名欄は「抜粋」ではなく「全量の一覧」である。この前提はまず押さえておきたいところです。

公正競争規約が上乗せするもの

法律の上に、業界の自主ルールである公正競争規約があります。こちらは順序まで踏み込んでいます。

材料(名)の文字と共に、使用した原材料を添加物も含め全て表示する。添加物以外の原材料と添加物に分け、添加物以外の原材料を使用量の多い順に記載、次に添加物を記載する。
(ペットフード公正取引協議会「公正競争規約に基づく必要表示事項及び表示制限について」)

安全法のほうは、順序を規定していません。環境省のQ&Aも「ペットフード安全法では、原材料名の記載順序は特に規定していません」としたうえで、多い順に記載することが望ましいと述べるにとどめています(環境省「ペットフード安全法Q&A」A3-10)。つまり並び順は、規約に参加している事業者にとっての義務です。

この記事では、並び順そのものよりも「並んでいる言葉の粒度」を追いかけます。順番が正しくても、書かれている言葉が「魚介類」であれば、読み取れる情報量は変わらないからです。

局長通知「第1表」──15の分類名

ここが本題です。分類名として使える言葉は、通知の第1表に列挙されています。数は15。実際の原文は次のとおりです。

第1表 分類名
穀類/いも類/でん粉類/糖類/種実類/豆類/野菜類/果実類/きのこ類/藻類/魚介類/肉類/卵類/乳類/油脂類
(21消安第2236号 第1表)

15個しかありません。そして注1には、こう書かれています。「上記以外のものにあっては、個別名による表示とする」。

ここから逆算すると、制度の設計思想が見えてきます。この15個に当てはまるものだけが、名前を省略する権利を持っているのです。15個の外にあるものは、個別名で書かなければなりません。魚は、その15個の中に入っています。

「魚介類」と「魚類」の使い分け

第1表には注が3つ付いています。魚に関わるのは注2です。

2 「魚介類」にあっては、魚類に由来する原材料のみ使用した場合は、「魚類」と表示することができる。
(21消安第2236号 第1表 注2)

「魚介類」は、魚だけでなく、いか・たこ・貝・えびなども含む広い言葉です。そのうち魚だけしか使っていない場合に限り、範囲を絞った「魚類」と書ける。そういうルールです。

逆から読むと、こうなります。「魚介類」と書いてあるフードは、魚以外の水産物が入っている可能性を排除できません。「魚類」と書いてあれば、魚以外は入っていないと読めます。ここは、4文字と3文字の差で確実に情報量が変わる、数少ないポイントです。

同じ構造は肉にもあります。注3は「肉類」を「畜肉類」と書けること、家きん由来のみなら「家きん類」「家禽類」と書けることを認めています。カテゴリを狭めれば、狭めた分だけ読み手に情報が渡る設計です。

なお、原材料名欄の読み解きは「無添加」のような言葉の扱いとも地続きです。添加物側の表示については無添加キャットフードの原材料の見方もあわせてご覧ください。

「魚介類(まぐろ、かつお、他)」── 括弧と「他」が意味すること

分類名の後ろに、個別名を書き足せる

分類名で書くか、個別名で書くか。この二択に見えますが、実際には中間があります。通知は、分類名の後ろに括弧を付けて個別名を書き足すことを認めています。

また、分類名の次に括弧を付して、当該原材料の個別名を記載できることとする。その場合、栄養成分の調整等により、一時的に変更される可能性のある原材料については、「他」、「等」と表示することもできることとする。
(21消安第2236号)

この一文に、実務のほとんどが詰まっています。「魚介類(まぐろ、かつお、他)」という見慣れた書き方は、ここから生まれています。

「他」「等」が使えるのは、どんなときか

注意深く読むと、「他」「等」には条件が付いています。無条件ではありません。

条文が挙げている条件は、「栄養成分の調整等により、一時的に変更される可能性のある原材料」であることです。つまり「これから変わるかもしれないので、いまのうちに逃げ道を作っておく」ための表記ではありません。変動しうるという実態が先にあって、それを表示に反映する手段として「他」「等」が用意されています。

天然の漁で獲れた魚を使う製品は、この条件にそのまま当てはまります。網に入るものが漁ごとに変わるからです。ロットごとにパッケージを刷り直すことは現実的ではありません。だから制度の側が、変動を吸収できる表示方法をあらかじめ用意している。そう理解すると、この一文の意味がはっきりします。

括弧の中身は、読み手に何を与えるのか

括弧を書くかどうかは、事業者の選択です。書かなくても違反ではありません。では書いてある場合、読み手は何を得ているのでしょうか。

得ているのは検証可能性です。「魚介類(まぐろ、かつお、他)」と書いてあれば、少なくともまぐろとかつおは入っている、と読めます。そして問い合わせる足がかりができます。「他には何が入っていますか」と聞ける状態になるからです。

一方で、括弧の中身は「主要な個別名」であって、全量の内訳ではありません。「他」の中身が2種類なのか10種類なのかは、括弧からは読み取れません。括弧は情報を増やしますが、情報を完結させるものではありません。

だから「括弧の有無」は、良し悪しの証明にはならない

ここは丁寧に線を引いておきたいところです。括弧を書いている事業者は、書かない事業者より多くを開示しています。それは事実です。

ただし、それがフードの品質の証明になるかというと、なりません。括弧の中身が正確に書かれていることと、その原料が良質であることは別の話です。開示の量と、中身の質は、別の軸です。

括弧の有無は「どれだけ見せる姿勢か」を測る材料であって、「どれだけ良いか」を測る材料ではない。この区別を持っておくと、表示に振り回されにくくなります。

同じ「魚介類」に、粉も原形も入る ── 日本とアメリカのラベルを比べる

真空パックされた小魚と切り身
同じ「魚介類」でも、粉にしたものと原形のままのものがある

フィッシュミール(魚粉)も「魚介類」と書ける

ここからがこの記事の核心です。「魚介類」という分類名は、加工の度合いを一切区別しません。

フィッシュミールは、魚を加熱・乾燥・粉砕して粉状にしたものです。水分がほとんど残っていません。原形はまったく残っていません。それでも、魚由来である限り第1表の「魚介類」に該当します。だから「魚介類」と書けます。

原形をとどめた魚も、同じく「魚介類」と書ける

一方で、切り身のまま、あるいは小魚がまるごとの形で入っている製品もあります。こちらも魚由来です。だから、やはり「魚介類」と書けます。

結果として、こうなります。粉にした魚と、原形をとどめた魚が、原材料名欄では同じ4文字になります。文字を見ているかぎり、どちらなのかは判別できません。

エキスも、パウダーも、加水分解物も、同じ言葉に吸収される

吸収されるのは、粉と原形だけではありません。魚エキス、フィッシュパウダー、たん白加水分解物。これらもすべて魚由来である限り「魚介類」に含めることができます。

加水分解物は、たん白質を酵素などで細かく分解したものです。エキスは、煮出して抽出した液体を濃縮したものです。素材としての性格も、製造工程も、まったく違います。それでも、分類名という一枚の言葉の下では区別されません。

これは分類名という仕組みの必然的な帰結です。分類名は「どのカテゴリに属するか」だけを示す言葉であり、「どう加工したか」を示す言葉ではないからです。制度の欠陥というより、制度の設計そのものです。

アメリカ(AAFCO)は、逆の設計になっている

ここで比較対象を置くと、日本のルールの輪郭がはっきりします。米国飼料検査官協会(AAFCO)のラベル解説は、真逆のことを言っています。

Ingredients must be listed individually. Collective terms, such as “animal protein products,” “grain products,” or “roughage products” that cover more than one ingredient and can be used on other animal feeds cannot be used on pet food products.
(原材料は個別に記載しなければならない。複数の原材料をまとめて指し、他の家畜飼料にも使えるような総称名──「動物性たん白質製品」「穀物製品」「粗飼料製品」など──は、ペットフード製品には使用できない)
(AAFCO “Reading Labels”)

「Collective terms(総称名)は使えない」。日本が明示的に許容しているものを、米国は明示的に禁じています。さらに、名前の付け方についても規定があります。

All ingredients must be listed by their AAFCO-established names and definitions established. This lets consumers compare products objectively.
(すべての原材料は、AAFCOが定めた名称と定義によって記載しなければならない。これにより消費者は製品を客観的に比較できる)
(AAFCO “Reading Labels”)

この設計のもとでは、生の骨抜き肉(de-boned chicken)と乾燥粉末(chicken meal)は、別々の名前で書き分けられます。読み手は、文字を見るだけで加工形態を判別できます。

魚については、さらに踏み込んだ規定があります。

If the meat or meat byproducts do not come from cattle, swine, sheep or goats, the species must be declared in the ingredient list.
(肉または肉副産物が牛・豚・羊・やぎ由来でない場合、その種を原材料リストに明示しなければならない)
(AAFCO “Reading Labels”)

牛・豚・羊・やぎ以外は、種の明示が必須。魚はここに含まれます。米国のラベルでは、魚種を書くことが義務になっているということです。

この非対称が、日本のラベルの読みにくさを作っている

整理すると、こうなります。

論点 日本 米国(AAFCO)
総称名・分類名 第1表の15分類名を明示的に許容 Collective terms を明示的に禁止
原材料の名前 分類名/個別名/併記から選べる AAFCOが定めた名称と定義で個別記載
魚の種の明示 義務なし(「魚介類」で足りる) 牛豚羊やぎ以外は種の明示が必要
粉と原形の判別 文字からは不可能 書き分けられるため可能

「日本のラベルは情報が少ない」という感想は、感覚としてはおおむね当たっています。ただしそれは、事業者が怠けているからではありません。制度が、その書き方を正式に用意しているからです。責める先を間違えると、判断を誤ります。

なお、特定の原材料を商品名や写真、説明文で強調する場合には、公正競争規約が内容量に対する下限(5パーセント以上)を定めています。ただしこれは「強調するなら」の話であり、原材料名欄の書き方そのものを縛るルールではありません。強調表示と一括表示欄は、別のレイヤーの規制です。

原材料リストだけでは、フードの良し悪しは判断できない

器に盛ったフードと真空パウチ
原材料の並びだけでは、量も質も読み取れない

水分込みの重量順という落とし穴

ここまでは「何が書けるか」の話でした。ここからは「書いてあるものをどう読むか」の話に移ります。

原材料は、加工前の重量順に並びます。ここで効いてくるのが水分です。生の魚や生の肉は、およそ7割が水分です。乾燥させた粉は、水分が1割を切ります。同じ量の魚由来成分を使っても、生のほうが重いので上位に来ます。

タフツ大学の臨床栄養チームは、この点を具体的に指摘しています。

Ingredients must be listed in order of weight, including water, so ingredients with high water content (like fresh meats and vegetables) are going to be listed higher than similar amounts of dry ingredients even though they may contribute fewer nutrients to the overall diet.
(原材料は水分を含む重量順に記載されるため、水分の多い原材料は、食事全体への栄養の寄与が少なくても、同量の乾燥原材料より上位に並ぶ)
(Tufts Petfoodology “Why You Shouldn’t Judge a Pet Food by Its Ingredient List”)

つまり「1番目に魚と書いてある」ことは、「魚が一番多い」ことをそのままは意味しません。加工後に残る量は、また別の話です。並び順は、加工前のスナップショットです。

分割表示(ingredient splitting)

もう一つ、順位を動かす仕組みがあります。同じ素材を複数の名前に分けて書く方法です。

Additionally, ingredients from the same source (i.e. chicken meat, chicken fat, chicken by-product meal) can be split into component parts, further complicating assessment of how much of each ingredient is actually present in the diet.
(さらに、同じ由来の原材料を構成要素に分割して記載できるため、各原材料が実際にどれだけ含まれているかの評価はいっそう難しくなる)
(Tufts Petfoodology)

一つの素材を3つに割れば、それぞれの重量は軽くなります。軽くなれば、並び順は下がります。合計は変わらないのに、見え方だけが変わります。

これは日本の分類名とは逆方向の話です。分類名は複数を1語にまとめて情報を減らします。分割表示は1つを複数に割って順位を動かします。方向は逆ですが、どちらも「並び順から実量を推定する」という読み方を難しくします。

「妖精の粉(fairy dust)」──載っているが、寄与はしていない

原材料リストには、栄養にほとんど寄与しない量でも名前が載ります。健康的な響きの素材をごく微量だけ配合し、それを前面に出す手法は「fairy dust(妖精の粉)」と呼ばれています。

リストは名前の一覧であって、量の表ではありません。載っていることと、意味のある量が入っていることは、別です。この区別を持っていないと、名前の並びだけで印象が決まってしまいます。

同じ問題は、定義の定まっていない言葉にも起こります。オーガニックと無添加の違いで扱った通り、言葉の見た目と保証される中身はしばしばずれます。

獣医栄養学の立場──「リストからは品質を判断できない」

では、原材料リストを丁寧に読み込めば品質が分かるのか。タフツ大学の答えは、はっきりしています。

There is no way to determine diet quality from the label or the ingredient list. The only thing that is certain is that you will pay more for the food with the more appealing ingredient list.
(ラベルや原材料リストから食事の品質を判断する方法はない。確かなことは、魅力的な原材料リストを持つフードにはより多く支払うことになる、という点だけである)
(Tufts Petfoodology)

同じ記事は、料理人の比喩でこう続けます。下手な料理人は最も高価な食材でも食べられないものにしてしまう。優れた料理人は、ありふれた食材で魔法をかけられる。素材の名前より、それを扱う技術と管理体制のほうが効くという指摘です。

別の記事では、より直接的に書かれています。原材料リストは、原材料の品質について何も教えてくれない。ある会社の使う鶏副産物ミールが、別の会社の使う骨抜き鶏肉より高品質であることもある(Tufts Petfoodology “Stop Reading Your Pet Food Ingredient List!”)。

副産物(by-product)=内臓は、猫にとって栄養価の高い原材料でもある

ここで、よくある誤解を一つ解いておきます。「副産物」「ミール」と書かれていると低品質だ、という受け取り方です。

副産物は、主に内臓を指します。肺、腎臓、肝臓などです。人間の食習慣では敬遠されがちですが、猫にとっては栄養価の高い部位です。タフツ大学も “While the organs (otherwise known as by-products) are nutritious ingredients”(内臓、すなわち副産物は栄養価の高い原材料である)と述べています(Tufts Petfoodology “Don’t Be Bothered by By-Products”)。

粉だから劣る、原形だから優れる、という単純な図式は成り立ちません。この記事も、そういう主張をするために書かれてはいません。ここで確認したいのは一点だけです。日本の原材料名欄では、その違いが文字に現れない。それだけです。

「魚としか書いていない」ことが、実際に問題になる場面

除去食試験(elimination diet trial)には使えない

分類名表示が現実に困る場面は、はっきりしています。最も明確なのが、食物アレルギーの診断です。

食物アレルギーを確定させる方法は、除去食試験です。食べたことのない原材料だけで構成した食事、または分子を細かく分解した加水分解食を、一定期間だけ与え続けます。そのうえで症状の変化を見ます。この試験は「何を食べたかが完全に分かっている」ことが前提です。

Diets for a diet trial should never include fruits and vegetables (unless a vegetable like a potato is one of the 2-3 ingredients), herbs, or ingredients such as kelp because they can make it hard to interpret the results if your pet doesn’t improve on the diet.
(試験用の食事には、果物や野菜、ハーブ、ケルプなどを決して含めるべきではない。症状が改善しなかったとき、結果の解釈が難しくなるからである)
(Tufts Petfoodology “Eliminating Mistakes in Elimination Diet Trials”)

同じ記事は、管理が甘いと試験そのものが無効になると警告しています。“you can completely invalidate the elimination diet trial, waste a lot of time and effort”(除去食試験を完全に無効にしてしまい、多大な時間と労力を無駄にする)。

「魚介類」表記のフードを試験に使うと、どうなるか。症状が改善しなかったとき、原因を切り分けられません。そもそも食物アレルギーではないのか。それとも、その「魚介類」の中に反応する魚が入っていたのか。区別がつかないまま、期間だけが過ぎます。

そして、すでに特定の魚にアレルギーがあると分かっている猫の場合。原材料が特定できないフードは、回避の判断ができません。これは避けようのない不利益です。

表示されていないたん白が混入していた、という研究がある

もう一つ、表示そのものの限界を示す話があります。ラベルに書かれていないたん白質が製品に入っていた、という報告です。

Several studies recently have shown that large proportions of over-the-counter diets contain ingredients (admittedly sometimes in very small amounts) not listed on the label, likely due at least in part to the common industry practice of running one diet after another in the same manufacturing line at the factory, without a thorough cleaning in between.
(近年の複数の研究によれば、市販フードの相当な割合に、ラベル未記載の原材料が──ときにごく微量ではあるが──含まれている。工場で同じ製造ラインを十分な洗浄なしに連続稼働させる、業界の一般的な慣行が一因と考えられる)
(Tufts Petfoodology)

同じ記事は、市販の「アレルギー」「限定原材料」をうたうフードで、一般的なたん白質による高い混入率が示されているとも述べています。名前が示す以上の原材料を含んでいるものが多い、とも。

つまり、表示を細かく読み込んでも、それが中身の完全な保証にはならないということです。これは日本の分類名表示に固有の話ではありません。米国のように個別記載を義務づけた制度でも、同じ問題が起きています。

猫の食物アレルギーの主因は、動物性たん白

ここで、猫にとって何が問題になりやすいかを確認しておきます。

The most commonly reported food allergies in dogs and cats are chicken, beef, dairy, and egg (and fish for cats).
(犬と猫で最も多く報告される食物アレルギーは、鶏、牛、乳製品、卵である。猫ではこれに魚が加わる)
(Tufts Petfoodology “Food Allergies”)

同じ記事は、これらの素材に特別なアレルギー性があるわけではないと補足しています。過去数十年、ペットフードで最も一般的な原材料だったため、曝露の機会が多かった。それだけの理由だ、という説明です。

そして、穀物によるアレルギーは実際にはまれです。猫にとって、魚は主要なアレルゲンの一つに数えられます。だからこそ「魚介類」という表記の粗さは、猫の飼い主にとって他人事ではありません。

妥当な不安と、誤解に基づく不安を分ける

ここまでの整理を、表にまとめます。

不安の内容 評価 理由
「魚介類」表記では、反応する魚を回避できない 妥当 猫にとって魚は主要アレルゲンの一つ。分類名では特定できない
ラベルにないたん白が混入しているのではないか 妥当 製造ラインの共用による混入が研究で報告されている
強調されている素材が、ごく微量なのではないか 妥当 fairy dust と呼ばれる手法が実在する
「ミール」「副産物」だから低品質だ 誤解 内臓は栄養価の高い部位。名前から品質は読めない
アレルギー対策にはグレインフリーが必要だ 誤解 主因は動物性たん白。穀物によるものはまれ
リストを読み込めば品質を見極められる 誤解 品質・配合比・製造技術はリストの外側にある

妥当な不安は、事業者に問い合わせるべき論点です。誤解に基づく不安は、フード選びの精度をむしろ下げます。この2つを分けることが、表示リテラシーの実質です。

ニコルスが魚種を書けない理由を、先に書きます

水揚げされたさまざまな魚
一度の水揚げで入る魚。この構成が日によって変わるため、魚種を固定して書けない

天然の漁で獲れた魚を使っている。だから入る魚が変わる

ここまで制度の話をしてきました。ここからは、自分たちの話をします。

ニコルスの原材料名は「季節のお魚」です。魚種名は書いていません。書かないのではなく、書けません。

理由は単純です。三重県熊野灘の天然の漁で獲れた魚を使っているからです。網に入るものは、その日の海が決めます。季節でも変わります。あらかじめ「この魚を使います」と決めて仕入れる形ではありません。だから、パッケージに固定の魚種名を刷ることができません。

これは前章で見た通知の条件に、そのまま当てはまります。一時的に変更される可能性のある原材料。制度は、こういう原料の存在を織り込んで設計されています。産地と製造の背景は熊野灘の魚を選ぶ理由にまとめています。

粉にすれば変動は吸収できる。原形を残すと、そのまま残る

ここが、この記事で一番お伝えしたい対比です。

魚種の変動は、技術的に吸収できます。複数の魚をまとめて加熱・乾燥・粉砕し、粉にして混ぜれば、原料は均一化されます。均一化されれば、ロットごとの差は小さくなります。粉にするというのは、変動を管理する有効な方法です。

ニコルスは、その工程を持ちません。魚の形をできるだけ残す作り方をしているからです。切り身は切り身のまま、小魚は小魚のまま製品になります。形を残せば、その日の魚がそのまま製品に出ます。変動は吸収されず、そのまま残ります。

ここで、表示に戻ります。粉にした製品も、原形を残した製品も、原材料名欄では同じ「魚介類」と書けます。文字は同じです。しかし、魚種を書けない理由は正反対です。一方は均一化した結果として個別名の意味が薄れ、もう一方は均一化しない結果として個別名が固定できない。

どちらが良いという話ではありません。粉にする製法には、供給の安定性という明確な利点があります。原形を残す製法には、そのぶん変動を引き受ける負担があります。ここで並べているのは、優劣ではなく製法の違いです。そして、その違いが表示には現れないという事実です。

「季節のお魚」という表記は、その結果として選んでいる

「季節のお魚」という言葉は、雰囲気で選んだ表記ではありません。実態に対して、いま書ける中で最も正確な言葉がこれだった、という順番です。

あわせて、製法についてお伝えできる事実がいくつかあります。

  • 無加水調理──水を加えず、魚自身が持つ水分で調理しています。水分の扱いについては無加水調理のキャットフードとはで詳しく書いています
  • 加熱加圧調理──骨までやわらかくなるまで加熱します。これは食感のためだけの工程ではありません。一部の魚に含まれるチアミナーゼ(ビタミンB1を分解する酵素)は、十分な加熱で不活性化します
  • 保存料・着色料・香料・増粘剤 不使用──原材料名欄に添加物が並ばないのは、この設計の結果です
  • 製造は三重県熊野市二木島──水揚げされる港のある地域で加工しています

原材料名欄が「季節のお魚」だけである、というのは、書ける情報が少ないということでもあります。だから、書けない部分を別の形でお伝えしています。ニコルスのこだわりのページも、その一部です。

それでも、書けないことの不利は残ります

ここまで読んで「なるほど」と思っていただけたなら、その次に、こちらもお読みください。

魚種を書けないことは、メリットだけではありません。前章で見た通り、原材料が特定できないフードには、はっきりした限界があります。

第一に、すでに特定の魚にアレルギーがあると分かっている猫には向きません。どの魚が入っているかを指定できない以上、回避の判断ができないからです。これは、こちらの努力でどうにかできる種類の問題ではありません。

第二に、除去食試験の最中の猫には使えません。試験は原材料が完全に特定できていることを前提にしています。分類名で書かれた原料は、その前提を満たしません。

第三に、皮膚や消化器の不調が続いていて、原因を切り分けている段階の猫。この場合も、原材料が特定できるフードのほうが向いています。切り分けのためには、変数を減らす必要があるからです。

該当する場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。診断と食事管理は、獣医師の指導のもとで進めるべき領域です。この記事は表示制度の解説であって、診断や治療の判断材料ではありません。

一括表示欄は、実物で確かめられます

表示の話は、実物を手元に置くといちばん早く分かります。パッケージ裏の一括表示欄を見て、原材料名の欄に何が書いてあるか、添加物がいくつ並んでいるか、原産国名がどうなっているか。自分の目で確かめられます。

ニコルス お試しセットでは、実際の一括表示欄をお手元で確認いただけます。この記事で扱った読み方を、そのまま試してみてください。

表示に書かなくても、記録は残ります

加工場での袋詰め作業
加工の記録は、表示に書かなくても残る

帳簿の備付けは、法律の義務

「魚介類としか書いていないなら、メーカー自身も把握していないのでは」。そう思われるかもしれません。ここは、はっきり否定できます。

ペットフード安全法は、事業者に帳簿の備付けを義務づけています。局長通知は、製造業者が記載すべき事項を具体的に列挙しています。

基準又は規格が定められた愛玩動物用飼料の製造業者又は輸入業者は、帳簿を備え、当該愛玩動物用飼料を製造し、又は輸入したときは、次の事項を記載し、これを保存しなければならない
ア 愛玩動物用飼料の名称及び数量
イ 愛玩動物用飼料の製造年月日
ウ 愛玩動物用飼料の原材料の名称及び数量
エ 愛玩動物用飼料の原材料の譲受けの年月日及び相手方の氏名又は名称
(21消安第2236号「帳簿の備付け」)

注目すべきは、ウとエです。原材料の名称と数量。そしてその原材料をいつ、誰から譲り受けたか。この2つが記載事項として明記されています。

保存期間は、最終記載日から2年間

記録は書いて終わりではありません。保存期間も定められています。

帳簿の保存期間は、当該帳簿に最終の記載をした日から起算して2年間保存しなければならない(規則第5条第3項)
(21消安第2236号)

2年間です。書面でも、電磁的記録でも構いません。通知は、電子計算機のファイルや磁気ディスク等による作成・保存を認めています。

表示の粒度と、記録の粒度は別物

ここから見えてくるのが、この章の結論です。

パッケージの粒度と、帳簿の粒度は、そもそも別の基準で決まっています。パッケージは「魚介類」で足ります。しかし帳簿は、そのロットで何をどれだけ、いつ誰から仕入れて使ったかを記録します。

制度がこう作られている理由も、通知に書かれています。有害な飼料が見つかったときに、流通実態を把握して迅速に対応するためです。廃棄や回収の命令を出せるようにするための備えです。つまり帳簿は、消費者に読ませるためではなく、追跡できるようにするために存在しています。

だから、こう言えます。パッケージに書かれていないことは、誰も知らないことではありません。表示に出ていないだけで、事業者の側には記録があります。

ロットごとの全量検査は義務ではない

もう一つ、誤解されやすい点を確認しておきます。ロットごとの検査です。

法律では原料、製品のロット毎の全量検査や報告を義務付けてはいません。製造されるペットフードが定められた規格どおりに安定的に製造されるためには、適切な製造管理及び品質管理が行われていることが重要です。
(環境省「ペットフード安全法Q&A」A2-1)

全量検査は義務ではない。代わりに求められているのは、安定的に規格どおり作るための製造管理と品質管理です。検査の回数ではなく、プロセスの設計が問われています。

製造の方法についても基準があります。加熱や乾燥は「微生物を除去するのに十分な効力を有する方法」で行うこと。有害物質を含む、あるいは病原微生物に汚染された疑いのある原材料を用いないこと(環境省「ペットフード安全法 基準規格等」)。原料が変動する製品ほど、この工程設計が効いてきます。

読み手が、事業者に聞いていいこと

帳簿があり、製造管理が求められている。ということは、聞けば答えられる範囲があるということです。問い合わせの手がかりとして、次のような質問が考えられます。

  • 原材料名が分類名の場合、その中に実際に何が含まれうるのか(範囲として)
  • 魚以外の水産物(いか・貝など)が入る可能性があるか
  • 粉状の原料を使っているか、原形をとどめた原料を使っているか
  • 同じ製造ラインで、他のたん白源を使う製品を作っているか
  • 原料の仕入れ基準と、受け入れ時の確認方法

これらは、表示だけでは埋まらない情報です。そして、事業者が答えられないはずのない情報でもあります。回答の内容そのものより、答えられるかどうかが判断材料になります。「確認して折り返します」でも構いません。記録に当たれる体制があるかどうかが分かるからです。

よくある質問

Q. 原材料に「魚介類」としか書いていないのは違反ですか?

違反ではありません。局長通知(21消安第2236号)は、添加物以外の原材料について第1表の分類名による表示を認めています。「魚介類」はその15の分類名の一つです。個々の魚種名まで書く法的な義務はありません。

ただし「違反ではない」ことと「情報が十分である」ことは別です。分類名からは、加工形態も魚種も読み取れません。表示は出発点であって、結論ではないと考えるのが実務的です。

Q. 「魚介類」と「魚類」は何が違うのですか?

範囲が違います。「魚介類」は、魚のほかに、いか・たこ・貝・えびなども含みうる広い言葉です。「魚類」は、魚に由来する原材料だけを使った場合に限って使えます。第1表の注2が、この使い分けを定めています。

したがって「魚類」と書いてあれば、魚以外の水産物は入っていないと読めます。「魚介類」と書いてある場合は、その可能性を排除できません。3文字と4文字の差ですが、意味の差は小さくありません。

Q. 「魚介類(まぐろ、他)」の「他」には何が入っているのですか?

表示からは分かりません。「他」「等」は、栄養成分の調整等により一時的に変更される可能性のある原材料について使える表記です。中身が2種類なのか10種類なのかは、括弧の外からは読み取れません。

知りたい場合は、事業者に直接問い合わせるのが確実です。原材料の名称と数量は帳簿の記載事項なので、事業者の側には記録があります。

Q. フィッシュミールが使われているかどうかは、表示で分かりますか?

分類名で書かれている場合、分かりません。フィッシュミールも生の魚も、魚由来である限り同じ「魚介類」に含めることができます。エキスやパウダー、加水分解物も同様です。

これは米国のルールとの大きな違いです。AAFCOは総称名の使用を禁じ、AAFCOが定めた名称と定義による個別記載を求めています。そのため米国のラベルでは、粉なのか原形なのかを文字から判別できます。

Q. 原材料の1番目に「魚」と書いてあれば、魚が一番多いということですか?

加工前の重量としては、そう読めます。ただし加工後に残る量は別の話です。生の魚はおよそ7割が水分なので、重量が重くなり上位に並びやすくなります。乾燥した原料は水分が少ないぶん軽く、下位に並びやすくなります。

タフツ大学は、水分70%の生肉が第1原材料の食事より、水分10%未満のミールが第2・第3原材料の食事のほうが、実際の肉の量が多いことがありうると指摘しています。並び順は、加工前の姿を写したものです。

Q. 猫が魚アレルギーかもしれません。「魚介類」表記のフードは避けるべきですか?

すでに特定の魚に反応することが分かっている場合、原材料が特定できないフードでは回避の判断ができません。この点は事実として押さえておく必要があります。除去食試験の最中も同様です。

ただし、自己判断でフードを次々に変えることは、原因の切り分けをかえって難しくします。まずはかかりつけの獣医師にご相談ください。魚そのものの扱いについては猫は魚を食べても大丈夫かもあわせてご覧ください。

Q. 魚種を書いていないメーカーに、直接聞いてもいいのでしょうか?

問題ありません。むしろ推奨されます。事業者には帳簿の備付け義務があり、原材料の名称と数量、譲受けの年月日と相手方を記載し、最終記載日から2年間保存することが求められています。答えられる情報は、制度上存在しています。

質問の内容そのものより、答えが返ってくるかどうかが判断材料になります。範囲としての回答、確認後の折り返し、いずれも記録に当たれる体制の表れです。

まとめ

最後に、この記事で確認したことを整理します。

「魚介類」は、国の局長通知が認めた15の分類名の一つです。魚種名を書く法的な義務はありません。だから書いていないことは違反ではなく、隠していると決めつけることもできません。

ただし、その言葉は加工の度合いを区別しません。粉も原形もエキスも加水分解物も、魚由来である限り同じ4文字に吸収されます。米国のAAFCOが総称名を禁じ、種の明示まで求めているのとは、正反対の設計です。この非対称が、日本のラベルの読みにくさを作っています。

そして、原材料リストだけでは品質は判断できません。水分込みの重量順、分割表示、fairy dust。読み方の落とし穴は複数あります。獣医栄養学の立場も一貫しています。品質は、リストの外側にあります。

だから、表示は出発点であって結論ではありません。妥当な不安は事業者に問い合わせる。誤解に基づく不安は手放す。この切り分けが、表示と付き合う一番実務的な方法です。

ニコルスは、原材料に魚種を書けません。天然の漁で獲れた魚を使い、原形を残す作り方をしているからです。粉にすれば変動は吸収できますが、その工程を持っていません。そして書けないことには、はっきりした不利があります。すでにアレルギーが分かっている猫、除去食試験の最中の猫には向きません。そこまで含めてお伝えするのが、書けない側の責任だと考えています。

表示の読み方は、実物があると身につきます。ニコルス お試しセットで、パッケージ裏の一括表示欄をご自身の目で確かめてみてください。この記事の内容は、他社製品のラベルを読むときにもそのまま使えます。

監修:NICO-LS開発チーム

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