キャットフードの「国産」は、原材料が日本産という意味ではありません。法令と業界規約が定める「原産国」は、最終の加工工程を完了した国のことです。だから原材料がすべて海外産でも、日本国内で中身に実質的な変更をもたらす加工を終えれば「原産国名:日本」「国産」と表示できます。これは違反ではなく、ルール通りの表示です。
この記事では、「国産」という言葉が実際に何を保証しているのかを整理します。よりどころにするのは一次資料です。ペットフード公正取引協議会の規約原文、環境省のペットフード安全法Q&A、公正取引委員会の告示にあたります。そのうえで、パッケージ裏の一括表示欄を自分で読み解くための5ステップまで落とし込みます。
ここで扱うのは「どのブランドが良いか」ではありません。表示のルールそのものです。ルールが分かれば、どんな商品を前にしても自分で判断できます。
結論:「国産」は原材料の産地ではなく、最終加工地のこと
「国産」は、最後に加工した場所を指す言葉です
パッケージ裏の一括表示欄には「原産国名」という項目があります。ここに書かれている国名の意味を、業界の自主ルールである公正競争規約は次のように定めています。
原産国とは、ペットフードの最終の加工工程を完了した国のことを言う。原産国が日本の場合は「国産」と表示することができる。
(ペットフード公正取引協議会「公正競争規約に基づく必要表示事項及び表示制限について」)
短い一文ですが、ここに全部が書かれています。原産国は「どこで獲れたか」ではなく「どこで作り終えたか」です。そして原産国が日本である場合に限り、「国産」という短い表記に置き換えることが認められています。
つまり「国産」という2文字は、原材料についてはひとことも語っていません。語っているのは加工の場所だけです。
だから「国産=原材料も日本産」とは限りません
ここから自然に導かれる結論があります。原材料が海外産であっても、日本国内で最終加工を完了すれば「国産」と表示できるということです。
法律であるペットフード安全法の表示基準も、同じことを別の言い方で規定しています。
「原産国名」又は「原産国」の文字を記載した上で、販売用愛玩動物用飼料の製造工程のうち、最終加工工程を完了した国を記載する。最終加工工程には、包装、詰め合わせ等の販売用愛玩動物用飼料の内容について実質的な変更をもたらさない行為は含まれない。原産国が日本の場合は、「国産」とのみ表示することもできる。
(ペットフード安全法に基づく必要表示事項について)
大事なのは、これが抜け道でも例外でもないという点です。法令がそう定めているとおりの表示です。表示している側は、ルールに従って正しく書いています。
ずれているのは、法令の定義と、読み手が「国産」という言葉から受け取るイメージの間です。このずれを埋めるのが、この記事の目的です。
この記事で分かること
以下の3点を、順番に押さえていきます。
- ルールの構造:ペットフード安全法・公正競争規約・景品表示法の3つが、どう役割分担しているか
- 「最終加工工程」の中身:フードのタイプ別に、どの工程が原産国を決めるのか。実際の判断事例つき
- 読み方の手順:パッケージ裏の一括表示欄を、どの項目からどの順で見ればいいか
最後に、原材料の産地表示が法令上「任意」であることの意味と、ニコルスがなぜ産地を書いているのかもお伝えします。
3つのルールを1枚に整理する — 安全法・公正競争規約・景表法
ペットフードの表示は、性格の違う3つのルールが重なってできています。ここを分けて理解すると、以降の話が一気に整理されます。
ペットフード安全法(法律)が義務づける5項目
ペットフード安全法は、正式には「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」といいます。国が定めた法律であり、犬猫用のペットフードを製造・輸入・販売するすべての事業者に適用されます。
この法律が表示を義務づけているのは、次の5項目です。
- 名称(犬用・猫用の別)
- 原材料名
- 賞味期限
- 事業者の氏名又は名称及び住所
- 原産国名
この5項目は、法律の目的から逆算すると意味が分かります。法律の第一の目的はペットの健康を守ることです。そのため、問題が起きたときに「誰が」「どこで」「何を使って」作ったかを追える最小限の情報に絞られています。
言い換えれば、5項目は「選ぶための情報」ではなく「追跡するための情報」として設計されています。
公正競争規約(業界の自主ルール)が上乗せする4項目
一方、ペットフード公正取引協議会が運用する公正競争規約は、上の5項目に加えて次の4項目も表示するよう求めています。
- ペットフードの目的(総合栄養食・間食・療法食などの区分)
- 内容量
- 与え方
- 成分(たんぱく質・脂質・粗繊維・灰分・水分を「%以上」「%以下」で表示)
合わせて9項目です。追加された4つを見ると、性格の違いがはっきりします。目的・内容量・与え方・成分は、いずれも飼い主が選び、日々与えるために必要な情報です。
公正競争規約は、景品表示法第31条にもとづき、消費者庁長官と公正取引委員会の認定を受けた業界ルールです。その狙いは、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を妨げないことにあります。だから安全法より項目が多いのです。
なお成分について、規約は確定値ではなく「以上」「以下」で示す保証分析値を求めています。これは後の話にもつながる、地味ですが重要な設計です。
景品表示法の告示にある「実質的な変更をもたらす行為」
3つめが景品表示法です。原産国の表示については、公正取引委員会告示第34号「商品の原産国に関する不当な表示」が土台になっています。その備考1に、こう書かれています。
この告示で「原産国」とは、その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行なわれた国をいう。
(公正取引委員会告示第34号「商品の原産国に関する不当な表示」)
この告示はペットフード専用ではありません。あらゆる商品に共通する原産国の考え方を定めたものです。
ここで、先ほどの安全法の条文をもう一度見てください。「最終加工工程には、包装、詰め合わせ等の内容について実質的な変更をもたらさない行為は含まれない」とありました。
両者は同じことを裏返しに述べています。告示は「実質的な変更をもたらす行為が行われた国」が原産国だと言い、安全法は「実質的な変更をもたらさない行為」は最終加工工程に含まれないと言う。「実質的な変更」という同じ一本の軸で判断しているわけです。
3つは矛盾していない。同じことを別の角度から言っている
整理すると、こうなります。
| ルール | 性格 | 原産国について言っていること |
|---|---|---|
| ペットフード安全法 | 法律(強制) | 最終加工工程を完了した国を書く。包装・詰め合わせは含まない |
| 公正競争規約 | 業界の自主ルール(認定済み) | 原産国=最終の加工工程を完了した国。日本なら「国産」と書ける |
| 景品表示法・告示第34号 | 法律(強制) | 原産国=内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国 |
3つとも、結論は同じ場所に着地します。原産国を決めるのは「実質的な変更をもたらす加工をどこでやったか」だけです。原材料をどこから持ってきたかは、この判断に入りません。
「最終加工工程」とは、具体的にどの工程か
ここまでで「最終加工工程を完了した国」が原産国だと分かりました。では、その「最終加工工程」とは具体的にどの作業を指すのでしょうか。
この点について、ペットフード公正取引協議会は「原産国表示に関する事例と考え方」(平成26年6月作成)という資料を公開しています。飼い主向けではなく事業者向けの資料ですが、誰でも読めます。
タイプ別の一覧
同資料は、ペットフードのタイプごとに「原産国として表示する最終加工工程」を明示しています。
| タイプ | 原産国を決める最終加工工程 |
|---|---|
| ドライ及びソフトドライ | 押し出し成型工程(エクストルーダー) |
| ウェット | レトルト殺菌工程 |
| 練り加工 | 練り成型後の加熱工程 |
| 焼き菓子・パン | 焼成工程 |
| 素材乾燥 | 実質的な変更をもたらす最後の工程 |
| 複数製品組合せ | 複数の製品の組合せにより新たな1つの製品の形態にする工程 |
環境省のペットフード安全法Q&Aにも、同じ内容が回答A3-15として載っています。ドライなら押し出し成型、ウェットならレトルト殺菌、練り加工なら練り成型工程が該当する、という説明です。
ここで注目してほしいのがウェットフードです。ウェットの原産国を決めるのは、レトルト殺菌の工程です。中身を調製する工程ではありません。この差が、次に見る事例で効いてきます。
「最終加工工程に当たらない」とされる行為
逆に、やっても原産国が変わらない行為も明記されています。同資料の事例表から、判断が示されているものを挙げます。
| 事例 | 原産国 | 理由(原文) |
|---|---|---|
| (5)-1 A国産の素材乾燥タイプの製品を、水分のばらつきを調整するため再乾燥した製品 | A国 | 水分調整の為の再乾燥は、製品に実質的な変更をもたらさないことから最終加工工程に該当しない。 |
| (5)-2 A国産のささみジャーキーに、日本でフレーバーをまぶした製品 | A国 | フレーバーをまぶす行為は単なる混合又は組合せにすぎず、最終加工工程に該当しない。 |
| (7)-1 A国産のささみジャーキーを日本で粉砕してふりかけにした製品 | A国 | 単なる切断にすぎず、最終加工工程に該当しない。 |
加えて、安全法の条文が明示するとおり包装と詰め合わせも最終加工工程には含まれません。海外から大容量で輸入したフードを、日本国内で小分けの袋に詰め直しただけでは「国産」にはなりません。
この線引きは、実は消費者側にとって守りになっています。袋詰めしただけで国産を名乗ることは、法令が禁じているからです。
実際の事例:海外で中身を作り、日本で加熱殺菌すると「原産国:日本」
そのうえで、同じ資料に載っているこの事例を見てください。ウェットフードに関する事例(2)-1です。
事例(2)-1 A国で内容物を調製後冷凍で輸入し、日本で解凍後レトルト殺菌した製品
→ 原産国:日本
理由:ウェットタイプのレトルト殺菌加工は最終加工工程に該当する。
読み下すと、こういう工程です。
- A国で中身(内容物)を調製する
- 冷凍した状態で日本へ輸入する
- 日本で解凍し、レトルト殺菌する
この製品の原産国は日本になります。ウェットの最終加工工程はレトルト殺菌だと定められている以上、これはルール通りの結論です。
近い事例として、練り加工タイプの事例(3)-1も同じ構造です。A国で成型まで行ったものを冷凍で輸入し、日本で加熱加工した製品の原産国は日本とされています。理由は「生原料から練り加工タイプの製品となる加熱加工は最終加工工程に該当する」からです。
ここで強調しておきます。これは違反行為の話ではありません。法令と規約が定めた判断基準に、正しく当てはめた結果です。事業者は指示されたとおりに表示しています。
ただし同資料には、次の注意書きも添えられています。
上記の事例に該当する場合であっても、著しく優良又は有利であると誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものについては、不当表示となる場合がありますので、ご留意下さい。
つまり「原産国名:日本」と書けること自体と、それをどう見せるかは別問題だ、という釘が刺されています。表示欄の記載が正しくても、全体として誤認させる見せ方をすれば不当表示になりうる、という構造です。
なおこの資料は平成26年6月の作成であり、同資料自身が今後必要に応じて見直すことがあると述べています。参照するときは作成時点を意識してください。
海外の原料が入っていても「国産」と書ける、もう一つの経路
「海外で調製→日本で加熱」以外にも、原産国が日本になる経路があります。環境省のQ&Aは、判断が難しい場面ごとに番号付きで回答しています。
国内製造の粒と海外原料を混ぜた場合
海外から輸入した原料と、国内で製造した粒を混ぜる。この場合について、Q&Aの回答A3-17はこう述べています。
A3-17 海外からの原料の混合割合にもよりますが、製品の大部分を国内製造粒が占めるのであれば国産と表示しても構いません。
判断のものさしは「製品の大部分を占めるのはどこで作った粒か」です。原料の出どころではありません。
複数の国で作った粒を混ぜた場合
では、複数の国で製造した粒を混ぜたときはどう書くのか。回答A3-16です。
A3-16 全く同量ずつであれば、全ての国を書くことが必要でしょう。ただし、製品の大部分を占める国を表示するのであれば、その限りではありません。
同量ずつなら全部書く。偏りがあるなら大部分を占める国を書く。ここでも軸は「どこで作ったか」で一貫しています。
「国産(三重県産)」のような書き方は認められている
もう一つ、あまり知られていない回答があります。A3-18です。
A3-18 原産国名が表示されているのであれば、最終加工した都道府県名・地域名を表示しても構いません。
つまり「原産国名:日本」に加えて、最終加工した都道府県名まで書くことは認められています。ただしこれは義務ではありません。書きたい事業者が書ける、という位置づけです。
都道府県名まで書いてあれば、読む側の解像度は一段上がります。「日本のどこか」ではなく「どの県で作り終えたか」まで分かるからです。この論点は、後ほどニコルスの話で再登場します。
さらにA3-19では、原材料の産地表示について次のように述べられています。
A3-19 ペットフード安全法は、原材料の原産地の表示については特に規定していませんが、記載する場合には、原産国名と混同することのないようにしてください。
原材料の産地表示は規定がない=任意です。ただし書くなら、原産国名と混同させてはいけない。この一文が、この記事の後半の核心につながります。
「国産だから安全基準が厳しい」は成り立たない
「国産」に安心感を持つ理由として、「日本のほうが検査や基準が厳しいはずだ」という感覚があります。ここは、法令の建て付けを確認しておく価値があります。
ペットフード安全法は、輸入品にも国産品にも同じ基準で適用される
ペットフード安全法にもとづき、「愛玩動物用飼料の成分規格等に関する省令」が定められています。ここで決まっているのは大きく2つです。
- 成分規格:添加物・農薬・汚染物質などについて、含有量の上限を定めたもの
- 製造の方法の基準:有害な物質を含む原材料や、病原微生物に汚染された疑いのある原材料を用いてはならない。加熱や乾燥は、微生物を除去するのに十分な効力を有する方法で行う
猫用については、プロピレングリコールを用いてはならないという規定もあります(犬用には使用可能)。
重要なのは適用範囲です。これらの基準は、国内で製造された製品にも、海外から輸入された製品にも、同じように適用されます。国が定めた成分規格や製造方法の基準に合わない犬猫用ペットフードは、製造・輸入・販売のいずれも禁止されています。
つまり法律上、「国産だから厳しい基準が課されている」という構造にはなっていません。日本で流通する時点で、同じ土俵に乗っています。
法律ができたきっかけ
環境省が公開しているペットフード安全法の概要によれば、この法律は、ある健康被害事案を契機に制定されました。2007年(平成19年)に米国で有害物質が混入したペットフードにより多数の犬や猫が死亡し、日本でもそれが輸入販売されていたことが判明した事案です。
この経緯は、法律の設計思想をよく表しています。問題は輸入という経路そのものではなく、原材料と製造工程の管理、そして流通経路を追えるかどうかにありました。だからこの法律は、成分規格・製造基準・届出・帳簿・回収命令をひとつのセットとして組み立てています。
法の執行面では、農林水産大臣および環境大臣が事業者に対して廃棄や回収などの措置を命じることができます。また報告徴収や立入検査の権限もあり、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が検査を担っています。
「国産」は安全のラベルではなく、加工地のラベル
ここまでをまとめると、「国産」という表記が保証しているのは次の一点だけです。
その製品の、内容に実質的な変更をもたらす最後の加工工程が、日本国内で行われた。
それ以上でも以下でもありません。原材料の産地も、安全基準の厳しさも、この2文字には含まれていません。
誤解しないでいただきたいのは、これは「国産に意味がない」という話ではないということです。加工地が分かることには、それ自体の価値があります。ただしそれは、原材料の産地とは別の情報です。
では、原材料や製造の実態は何から判断すればいいのか。答えは、同じ一括表示欄の中にあります。次の章で、見る順番を決めていきます。
パッケージ裏の読み方 — 5ステップ
一括表示欄には、法律と規約が定めた項目が並んでいます。バラバラに眺めるのではなく、順番を決めて読むと実態が浮かび上がります。
STEP1 「原産国名」を見る
まず「原産国名」または「原産国」の項目を探します。ここに国名(または「国産」)が必ず書かれています。義務表示だからです。
読み取れるのはひとつだけです。最後の加工をどの国で終えたか。「日本」または「国産」なら、日本国内で実質的な変更をもたらす加工が完了しています。
ここで判断を止めないことが大事です。原材料についてはまだ何も分かっていません。次へ進みます。
STEP2 「事業者の氏名又は名称及び住所」の種別を見る
ここが一括表示欄でいちばん情報量の多い項目です。そして、あまり注目されていない項目でもあります。
安全法の表示基準は、事業者名の書き方をこう定めています。
表示内容に責任を有する者について、「製造業者」又は「製造者」、「輸入業者」又は「輸入者」、「販売業者」又は「販売者」のいずれかの種別を記載した上で、その氏名又は名称及び住所を記載する。
(ペットフード安全法に基づく必要表示事項について)
つまり事業者名の前には、必ず3つのうちどれかの種別が書かれています。それぞれの意味は次のとおりです。
| 表示 | 意味すること |
|---|---|
| 製造業者/製造者 | その事業者が製造を行っている |
| 輸入業者/輸入者 | その事業者が輸入を行っている |
| 販売業者/販売者 | 下記A3-13の場合を含め、販売の責任者として表示している |
そして「販売業者」については、環境省Q&Aの回答A3-13に踏み込んだ説明があります。
A3-13(要旨) 製造を行っている事業者は製造業者と、輸入を行っている事業者は輸入業者と表示する。ただし、自社ブランドで販売する製品(銘柄)の調達ルートが混在(国内自社製造、海外委託製造品を自社で輸入、国内委託製造先又は輸入商社からの導入等)する事業者であって、明確に区別して管理することが困難な場合は、「販売業者:○○株式会社」と表示することもできます。
ここは丁寧に読んでください。「販売業者」と書かれていること自体は、まったく違反ではありません。ルールが正面から認めている表示方法です。
そのうえで分かるのは、調達ルートが1本に固定されていない可能性があるということです。国内の自社工場、海外の委託先、輸入商社経由などが銘柄の中で混在していて、区別して管理することが難しい場合に選べる表示だからです。
だから読み方はこうなります。「販売業者」とあったら、STEP1で確認した原産国名と必ずセットで読む。原産国名が日本なら、国内のどこかで最終加工されたことは確定しています。そのうえで原材料の出どころは、次のステップで確かめます。
STEP3 「原材料名」の並び順を見る
原材料名の欄は、並び順にルールがあります。公正競争規約は次のように定めています。
添加物以外の原材料と添加物に分け、添加物以外の原材料を使用量の多い順に記載、次に添加物を記載する。
環境省Q&AのA3-10は、安全法自体は記載順序を規定していないとしています。そのうえで、消費者への適切な情報提供の観点から、原則として多い順に記載することが望ましいと述べています。
したがって最初の1〜3番目に書かれている素材が、そのフードの主役です。ここを見れば、何が中心のフードなのかが分かります。
あわせて、記載の粒度も見てください。「魚介類」「肉類」のようなまとめた表記なのか、具体的な素材名まで書かれているのか。粒度が細かいほど、読み手が確かめられる範囲は広がります。
STEP4 原材料の産地が書かれているかを見る
ここが、この記事でいちばん誤解が起きやすいポイントです。
先に結論を言います。原材料の産地が書かれていないことは、違反ではありません。環境省Q&AのA3-19が示すとおり、ペットフード安全法は原材料の原産地表示について特に規定していないからです。
つまり産地表示は任意表示です。書かないという選択は、ルール上まったく正当です。「書いていないから隠している」という読み方は、法令の建て付けから見て正しくありません。
そのうえで、書いてある場合には別のルールが働きます。A3-19は「記載する場合には、原産国名と混同することのないようにしてください」と続けています。原材料の産地と原産国名は別物であり、読み手が取り違えないよう区別して書く必要がある、ということです。
さらに公正競争規約には、特定の原材料を強調する場合の基準があります。
「ビーフ」、「チキン」、「まぐろ」等特定の原材料をペットフードの内容量の5パーセント以上使用している場合でなければ、当該ペットフードの名称、絵、写真、説明文等に当該原材料を使用している旨の表示をしてはならない。
いわゆる5%ルールです。商品名・イラスト・写真・説明文のどこかで特定の原材料をうたうなら、その原材料が内容量の5%以上使われている必要があります。
読み手の側から見ると、これは強調表示の下限が保証されているということです。パッケージ表面で大きくうたわれている素材については、少なくとも5%以上は入っています。逆に言えば、保証されているのは下限だけです。
STEP5 添加物の用途名併記を見る
最後に、原材料名欄の後半にある添加物の記載を見ます。添加物は原則としてすべて記載する必要があります(加工助剤を除く)。
さらに、次の6つの用途に当たる添加物は、物質名に加えて用途名を併記する義務があります。
- 甘味料
- 着色料
- 保存料
- 増粘安定剤
- 酸化防止剤
- 発色剤
この併記ルールのおかげで、聞き慣れない物質名が並んでいても「何のために入っているか」は読み取れます。物質名だけを調べるより、用途名から入るほうが早く整理できます。
添加物表示の読み方は単独で1本の記事になる分量があるため、詳しくは無添加キャットフードの原材料表示の見方を参照してください。
5ステップのまとめ
| STEP | 見る項目 | 分かること |
|---|---|---|
| 1 | 原産国名 | 最後の加工を終えた国 |
| 2 | 事業者の種別(製造/輸入/販売) | 表示責任者の立場と、調達ルートの見当 |
| 3 | 原材料名の並び順 | そのフードの主役と、記載の粒度 |
| 4 | 原材料の産地(任意表示) | 書いてあるかどうか。書いてある範囲 |
| 5 | 添加物と用途名 | 何が、何のために入っているか |
この5つを順に見れば、「国産」の2文字だけでは分からなかったことが、かなりの精度で見えてきます。
産地を「書ける」ことと「書かない」ことの差
ここからは、少し角度を変えます。原材料の産地表示が任意だとして、では書くという行為には、どんな意味があるのかを考えます。
原材料の産地表示は、法令上の義務ではない
繰り返しになりますが、環境省Q&AのA3-19のとおり、原材料の原産地表示に規定はありません。義務表示の9項目にも入っていません。
だからまず押さえるべきは、書かないことを責める根拠は法令にはないということです。事業者には事業者の事情があります。原料の調達先が季節や相場で変わる、複数の産地をブレンドしている、取引上の理由で開示できない。いずれも珍しい話ではありません。
書くと何が起きるか — 検証可能性を自分から差し出すことになる
そのうえで、産地を書いた瞬間に何が起きるかを考えてみてください。
第一に、読み手がそれを確かめにいける状態になります。「三重県熊野灘」と書けば、その海がどこにあり、どんな漁が行われているかを誰でも調べられます。書いた内容と実態がずれていれば、指摘されうる状態に自分を置くことになります。
第二に、A3-19の「原産国名と混同することのないように」というルールが働きます。原材料の産地を書くなら、原産国名と区別できる書き方をしなければなりません。表示設計上の制約が1つ増えます。
第三に、その産地名を商品名・イラスト・写真・説明文で強調するなら、5%ルールの基準に立つことになります。強調するからには、内容量の5%以上という下限を満たしている必要があります。
つまり産地を書くことは、自由な宣伝ではありません。義務のない情報を出すことで、確かめられる余地と、守るべきルールを自分から増やす行為です。
トレーサビリティ:法律は「表示」ではなく「記録」を義務づけている
ここで、もう一段深い構造に触れます。法令が事業者に対して厳しく求めているのは、実はパッケージへの表示ではなく、帳簿への記録です。
農林水産省のリーフレット「ペットフードの安全確保のために」(令和8年7月)には、次のように書かれています。
ペットフードの輸入、製造又は卸売を行う事業者は、輸入、製造及び販売したペットフードの名称、数量などを帳簿に記載、あるいはコンピュータで記録し、2年間保存する必要があります。
製造した場合に記録すべき項目も、同リーフレットに列挙されています。
- ペットフードの名称・数量
- 製造年月日
- 原材料の名称・数量
- 原材料の譲受けの年月日、相手方の名称
並べてみてください。原材料の名称も、数量も、いつ誰から仕入れたかも、法令は記録を義務づけています。ただし、それを消費者に見せることは義務づけていません。
この非対称は、法律の目的を考えれば筋が通っています。帳簿は、問題が起きたときに流通経路をさかのぼるための仕組みです。国は事業者に廃棄や回収を命じることができ、FAMICによる立入検査も行われます。帳簿は選ぶための情報ではなく、追跡するための情報として設計されています。
だから「産地を書く」は、宣伝ではなく手続きの延長
ここまでを重ねると、産地表示の位置づけがはっきりします。
事業者はもともと、原材料の名称と、いつ誰から仕入れたかを記録しています。それは法令上の義務です。産地を書くというのは、その記録の一部を、確かめられる形で外に出すという判断にすぎません。
新しく作り出す情報ではありません。すでに手元にあるものを、開示するかどうかの選択です。だからこそ、書いてある産地表示は読み手が判断材料として使えるのです。
ニコルスの場合:原料の水揚げ地と、加工地を並べて書く
ここからは、ニコルスが実際にどう書いているかをお伝えします。他社との比較ではなく、自社の事実だけを並べます。
原材料:三重県熊野灘の天然魚
ニコルスの原材料は、三重県の熊野灘で獲れた天然魚です。養殖ではなく、その海で漁師さんが獲った魚を使っています。
原材料名の表記は「季節のお魚」です。魚種を書いていません。理由は単純で、天然魚は季節と漁によって獲れるものが変わるからです。今日の網に入った魚と、三か月後の網に入る魚は同じではありません。
そして前章で見たとおり、特定の魚種名を商品名や説明文で強調するなら5%ルールの基準に立つことになります。獲れる魚が変動する以上、特定の魚種を前面に出す書き方は選べません。だから「季節のお魚」という表記になります。
なぜ熊野灘なのかという背景は、なぜニコルスは熊野灘の魚を選ぶのかで詳しくお話ししています。
製造:三重県熊野市二木島
製造地は三重県熊野市二木島です。商品ページにも記載しています。
ここで、この記事の前半で見た表示ルールを当てはめてみてください。ニコルスはウェットフードです。ウェットの原産国を決めるのはレトルト殺菌工程でした。その工程を含む製造を、三重県熊野市二木島で行っています。
そして環境省Q&AのA3-18は、原産国名が表示されているのであれば最終加工した都道府県名・地域名を表示しても構わないと述べています。都道府県名を書くことは、ルール上認められた任意表示です。
だから「原産国:日本」と「原材料の産地」が食い違わない
2つの事実を並べます。
| 項目 | ニコルスの場合 |
|---|---|
| 原材料の産地(任意表示) | 三重県 熊野灘 |
| 最終加工地(原産国の根拠) | 三重県 熊野市二木島 |
原料が獲れる海と、最後に加工する場所が、同じ三重県内にあります。これが、ニコルスについて言える事実です。
この記事の前半で見た事例(2)-1を思い出してください。海外で内容物を調製し、冷凍で輸入し、日本で解凍してレトルト殺菌する。この製品の原産国は日本になります。ルール通りの、正しい表示です。
その事例と、上の表を並べて置きます。どちらも「原産国:日本」と表示できるけれども、その内側にある事実は違います。ここで大事なのは、どちらが良い悪いという話ではなく、「原産国:日本」という同じ表記の下に、複数の実態がありうるという構造そのものです。
だから読み手には、STEP1からSTEP5までの手順が要ります。ニコルスがやっているのは、その手順で確かめられる情報を、あらかじめ表に出しておくことです。
魚種を固定しないのに、産地は固定できる理由
最後に、ニコルスが書けないことも先にお伝えします。
魚種は固定できません。天然魚を使う以上、その日の漁で獲れた魚が原料になります。だから原材料名には「季節のお魚」としか書けません。特定の魚をうたうこともしません。これは情報開示の限界であり、隠しているわけではありません。
一方で、場所は変わりません。漁場は熊野灘、加工場所は熊野市二木島。ここは季節に左右されません。だから書けます。
「魚種は書けないが、場所は書ける」。この線引きが、ニコルスの表示の実態です。書けないものを書けるように見せかけるより、どこまで確かめられるかを正直に示すほうを選んでいます。
調理法についても同じ考え方です。ニコルスは水を加えずに魚自身の水分で調理する無加水調理で、加熱加圧により骨までやわらかく仕上げています。保存料・着色料・香料・増粘剤は使用していません。この製法の詳細は無加水調理のキャットフードとはでお伝えしています。
実際の一括表示欄を見ていただくのがいちばん早いと思います。初回¥980のトライアルセットで、原材料名・原産国名・事業者表示を手元で確認してみてください。この記事の5ステップを、そのまま試せます。
「無添加」「ヒューマングレード」— 定義が定まっていない言葉
表示の話をするうえで、避けて通れない領域があります。パッケージや広告でよく見るのに、法令に定義が置かれていない言葉です。
法令に定義がない言葉がある
これまで見てきた「原産国」「最終加工工程」「実質的な変更」は、いずれも条文や規約に定義があります。だからこそ、この記事では原文を引用しながら説明できました。
一方で、「無添加」「ヒューマングレード」「グレインフリー」「プレミアム」「自然派」といった言葉があります。これらについては、ペットフード安全法や公正競争規約の必要表示事項の中に定義規定が置かれていません。
誤解しないでいただきたいのは、定義がない=使ってはいけない、という意味ではないことです。これらの言葉には、それぞれの事業者が込めた意味があります。ただしその意味は言葉自体からは確定できない、ということです。
だから読み手側の作業は決まっています。その言葉が何を指しているのかを、表示項目で確かめる。「無添加」であれば、何が入っていないのかを原材料名欄で見る。それだけです。
規約が明確に禁じていること
定義がない言葉がある一方で、公正競争規約が明確に禁じている表現はあります。ここは線がはっきりしています。
まず、客観的根拠のない最上級表現です。
客観的な根拠がなく「特選」「特級」「最高」「No.1」など、その商品が最高品質であるかのような、品質レベルを誤解させるような表示はしてならない。
次に、他社製品への中傷です。
他事業者のペットフード製品に対し、あるいはその内容成分の一部に関し、科学的な根拠なく「安全ではない」「危ない」「病気になりやすい」「有害」など、一般消費者に著しく誤解を与えるような表現はしてはならない。
そして、効能・効果をうたう表現です。ペットフードにおける薬事表現に関するガイドラインは、ペットフードが医薬品でも医薬部外品でもない以上、効能・効果または性能に関する広告表示はできないとしています。病名や症状の記載、疾病の予防に該当する記載などが該当します。
この3つの禁止事項は、読み手にとってものさしになります。断定的に強い言葉が並んでいるとき、それが規約の線を越えていないかを見る目を持てるからです。
だから、言葉ではなく「表示項目」で確かめる
結局のところ、判断の拠りどころは同じ場所に戻ります。パッケージ表面の言葉ではなく、裏面の一括表示欄です。
表面の言葉は、事業者が伝えたいことを表しています。裏面の一括表示欄は、法令と規約が書くべきと定めたことを表しています。両方を見て、食い違いがないかを確かめる。これがこの記事を通じてお伝えしたい読み方です。
「無添加」という言葉の中身については無添加キャットフードの安全性ガイドでお話ししています。「オーガニック」との違いはオーガニックと無添加の違いをご覧ください。
よくある質問
Q1. 「国産」と書いてあれば、原材料も日本産ですか?
いいえ、そうとは限りません。公正競争規約は原産国を「ペットフードの最終の加工工程を完了した国」と定義しています。原材料がすべて海外産であっても、日本国内で最終加工を完了すれば「原産国名:日本」「国産」と表示できます。原材料の産地を知りたい場合は、原材料名欄に産地が任意表示されているかを確認してください。
Q2. 「原産国:日本」と「国内製造」は同じ意味ですか?
一括表示欄の義務表示として定められているのは「原産国名」です。ペットフード安全法および公正競争規約が定義しているのも、この「原産国」です。「国内製造」という語については、必要表示事項の中に定義規定が置かれていません。したがって、判断の基準になるのは一括表示欄の「原産国名」の記載だと考えてください。
Q3. 海外から輸入したフードを日本で小分けしたら「国産」になりますか?
なりません。ペットフード安全法の表示基準は「最終加工工程には、包装、詰め合わせ等の内容について実質的な変更をもたらさない行為は含まれない」と明記しています。環境省Q&AのA3-15も同様です。大容量で輸入したものを日本で袋詰めしただけでは、原産国は製造した外国の国名になります。
Q4. 原材料の産地が書かれていないフードは、避けたほうがいいですか?
産地が書かれていないこと自体は違反ではありません。環境省Q&AのA3-19が示すとおり、ペットフード安全法は原材料の原産地表示について規定していないためです。書かない選択はルール上正当です。判断したい場合は、産地の有無だけで決めず、原産国名・事業者の種別・原材料名の並び順・添加物の記載をあわせて見ることをおすすめします。
Q5. 「国産(三重県産)」のような書き方は認められているのですか?
認められています。環境省Q&AのA3-18は「原産国名が表示されているのであれば、最終加工した都道府県名・地域名を表示しても構いません」と回答しています。ただし義務ではなく任意表示です。また、ここで示される都道府県名は最終加工地であり、原材料の産地とは別の情報である点に注意してください。
Q6. 原産国が日本なら、安全基準も厳しいということですか?
いいえ。ペットフード安全法にもとづく成分規格および製造の方法の基準は、国内で製造された製品にも輸入された製品にも同じように適用されます。基準に合わない犬猫用ペットフードは、製造・輸入・販売のいずれも禁止されています。原産国によって適用される基準が変わる仕組みにはなっていません。
Q7. パッケージのどこを最初に見ればいいですか?
裏面の一括表示欄から見てください。順番は、①原産国名 →②事業者の種別(製造業者/輸入業者/販売業者)→③原材料名の並び順 →④原材料の産地の記載の有無 →⑤添加物と用途名、の5ステップです。表面のキャッチコピーではなく、この5項目を順に見るだけで、そのフードの実態はかなり見えてきます。
Q8. 「販売業者」と書かれていたら、何か問題があるのですか?
問題はありません。環境省Q&AのA3-13が認めている表示方法です。自社ブランドで販売する製品の調達ルートが混在し、明確に区別して管理することが困難な場合に「販売業者:○○株式会社」と表示できるとしています。ルールが正面から認めた表示方法です。読むときは、原産国名の記載とあわせて確認してください。
まとめ
「国産キャットフード」の「国産」が保証しているのは、最終の加工工程を日本国内で完了したことだけです。原材料の産地でも、安全基準の厳しさでもありません。これは法令と規約が定めたとおりの表示であり、表示している側は正しく書いています。
だから読む側に必要なのは、言葉への警戒ではなく手順です。原産国名、事業者の種別、原材料名の並び順、産地表示の有無、添加物の用途名。この5つを順に見れば、2文字では分からなかったことが見えてきます。
ニコルスは、三重県熊野灘の天然魚を、三重県熊野市二木島で加工しています。魚種は季節で変わるため「季節のお魚」としか書けませんが、漁場と加工場所は変わらないので書いています。書けることと書けないことを、そのままお伝えするのが私たちの方針です。
実際の表示を手元で確かめてみたい方は、初回¥980のトライアルセットからどうぞ。原材料や製法に対する考え方はニコルスのこだわりにまとめています。
参考:ペットフード公正取引協議会「公正競争規約に基づく必要表示事項及び表示制限について」/同「ペットフード安全法に基づく必要表示事項について」/同「原産国表示に関する事例と考え方」(平成26年6月)/環境省「ペットフード安全法Q&A」/環境省「ペットフード安全法の概要」/環境省「愛玩動物用飼料の基準・規格」/農林水産省「ペットフードの安全確保のために」(令和8年7月)/公正取引委員会告示第34号「商品の原産国に関する不当な表示」/農林水産消費安全技術センター(FAMIC)/ペットフード公正取引協議会「薬事表現に関するガイドライン」
監修:NICO-LS開発チーム